デジタルオーディオあれこれ

半田ごての人。紙と鉛筆だけではちょっと。

音の悪いホールって。

 技術的に豊富な経験があってその方面の会社もやっている人が、サントリーホールの音が悪いと書いたら凄い反響があったというビデオをアップしていて、とても面白い。

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オーディオ関連で技術方向に詳しい人は、あんまり生の演奏は聴かない。スピーカーの位置を1mm単位で設定するとかの方向に行ってしまう。戦の無くなった江戸時代の武士みたいな感じになる。本職を試す現場がないので精神論に傾いてしまうような。武士道は死ぬ事と見つけたりとかの。本来の演奏を聞くのが目的ではなくなって、装置の設計とか調整が本職になってしまう。

 

 この人はビデオ見ても本来の目的を科学的な観点で追いかけてるし、今も現場にいるようでピンボケしてない。某有名DACメーカーの人なんかは、完全に圏外になっちゃってて有名。ほとんど同意はされていないらしいけど、サントリーホールの話は分からなくもない。但し、何処に座ったかが書いてないようで、そこは残念。

 

 サントリーホールは何度か言った事があるので、納得できる部分は多い。座る場所次第で大きく印象が変わっただろうとは思うけど。他の記事を読んでみると、割と一階の前の方に座る傾向があるみたいなんで、サントリーホールもその場所だったとするならば、ガッカリは納得。たぶん、音が全部頭の上を通り過ぎて行ってしまうような感じになる。当然、宜しくない。

 

 ホールってオーディオ的な言い方をするならば、間違いなく最大出力という概念がある。それを超えるとアンプと同じでサチる。アナログなんでデシタルほどに露骨ではないけれど、明らかに質は落ちる。何処が最大出力かは些か決めずらい。個人の感性に依存するので。いつも思うのは、ホールの一番良い音と言うのは、楽団員がそれぞれに自分のパートを小音量で練習している、本番前の時だと思う。今まで行った全てのホールでそう。サントリーホール、ミューザ川﨑、札幌のきたら、とか。

 

 一番極端だったのは、鼓童の太鼓を狭い市民会館みたいな所で聞いた時。もうクリップしまくり。あの太鼓は屋外で聞くのがベストでしょう。あの大音量に耐えられるホールなんてないと思う。PAも最悪だったし。好みの問題として、ましなPAにも遭遇したことはない。サントリーホールの場合、最大出力は比較的に大きめだけど、一階席はダメね。音は全て通り過ぎていく。二階席ならばそんなに悪くはない。バイオリンの音はレコードで聞くようなオンマイクにはならないけれど、バランスとしては悪くない。

 

 どこのホールであっても、響きを重視するならば二階席になるだろうし、そうなると録音で耳にするようなバイオリンのソロは聴けない。録音とは、なんとかその二つを両立させて不可能を可能にしようとする自己矛盾の行為であるんだろうけど。サントリーホールの一階席はナシでしょう。低音は頭の上をワルキューレの騎行のように飛び去るのでした。

 

 普段は二階席なんだけれど、一度一階も試そうと真中ぐらいに座った事がある。不運な事にこの時はべートーベンの五番だった。この時はチェコフィルで指揮者(ビィオフラーチェク)の意図として、「五番はコントラバスの曲だろが」、となっていた。五番の演奏になると、コントラバスが五人だったかずらずらと普段ならばティンパニが陣取る一番後ろに出張ってきた。最後列にコントラバス五人。

 

 ではありながら、低音は全て宙に響くばかりでおもわず後ろを振り返って飛び去る低音の尻尾でもつかめないかと思うばかりに、すかすか。二階席で聞くべきだった。そうすれば指揮者の意図の通り、コントラバスの洗礼を顔面で受け止められただろうに。残念。生の演奏とはそんな一期一会で、外れもあれば当たりも出る。チケット価格の割には当りの出る確率は低い。生なら何でも良いという事は無い。外れを以て反面教師にする覚悟が肝要かと。外れても料金の発生しないオーディオはその点では有利。

 

 クラシックの場合、何処に座るかが大事。指揮者の顔を見たいからと対面している所に座るのもアリだろうけど、音は良くないでしょう。ホールの評価をその場所でする事は無いだろうとしても、座る場所が大事。オーディオでもどこで聞くかは重要。それはスピーカーの位置を変えるのと同じ意味。聞いている音とは、音源からの距離と僅かばかりは温度、ならびに部屋での反射で決まる。温度が変わると波長が変わり、距離の変化と等価なので。現実として、温度差に合わせた特性の補正の必要はないみたいだけど、数字的には大きく変わる。