デジタルオーディオあれこれ

半田ごての人。紙と鉛筆だけではちょっと。

CDとレコードの違いとか、必要な帯域とか。

 CDとレコードの音の違いについて、当たり前なんだけどほとんど誰も言ってない事。知る限りでは、初めて見た。11分ぐらいから出て来る。

https://www.youtube.com/watch?v=Tu3yiuSh8aA&t=1037s

レコードのSNは60dBぐらいなのに、一般的には98dBと言われるCDと同等か状況次第ではそれ以上の音になるのは何故か、という疑問。良くある答えは、デジタルとアナログは林檎とオレンジなんで比べられない、というやつ。どっちも時間軸上の電気信号なんで、林檎と林檎なのは明白なんだが。

 

 アナログの場合、-60dBFSにまで信号が小さくなったとしても、歪はあまり変わらない。むしろ良くなるのが普通。信号が-60dBFS、ノイズが-60dBFS、歪が-90dBFSぐらいになる。でもSNは確かに0dBになる。CDでは、信号が-60dBFS、ノイズが-100dBFS、歪が-100dBFSぐらい。大雑把には。SNはまだ40dBぐらいは残る。

 

 この状態だと人の耳では両者にあまり差が出ない。信号自体の質には大差がないので、十分に識別可能。都会の雑踏の中でも会話が成り立つのと同じ。SNがマイナスになったとしても、それ程の問題にはならない。むしろ、レコードのノイズは暖かみとして判断されることが多いので、聴感としてはほぼ無視できる。弱音部での音の良さは好感につながる。音が大きくなると相対的にノイズも歪も感知しないので、やっぱり両者に差はあまりない。

 

 更にはCDだと多くの場合は大量のISOが出て来るし、編集も雑。所謂、海苔波形。レコードでクリップする事は無いし、編集もマシな場合が多い。そんな事情があるので、良く管理された環境でのレコード再生がCDを上回るのは当然の結果ではある。ただし、CDに書かれているデータと、レコードの中身は同じ曲であっても全くの別物なので、そういう意味では林檎とオレンジの比較でしかない。そこを無視するならば、レコードの方が良いという場合は多くなる。

 

 論より証拠なんで、テストレコードをかけて調べてみれば一目瞭然。大きめの時と小さめの時の歪。レベルが下がると、ほぼ全ての場合で歪は小さくなる。DACでもだいたい似た傾向。カートリッジはMCL-1000。 こういう事実があるので両者の聴感上の違いは小さい。 

 

 しかし、CDに高域補正がないかといえば、それは不正確。今ではほとんど使われなくなったけれど、プリエンファシスというのはあった。CDプレーヤーはこれの有無を検知して、かかっていればディエンファシスで元に戻す。なので聞いている人は関知しない。但し、リッピングをした時はその限りではないので、多くの場合はそのままになる。プリエンファシスはかかりっぱなし。

 

 知らずに聞いていると、これは分からない。そこそこ高域が上がっているのだけど、知らずに聞いているのが普通。うちでもピアノソナタなんかずっとそれで聞いていて特に不満はなかった。バイオリンだとあるかもだけど。高音が金ぴかの時は、怪しいかもねという話。

 

 レコードの周波数帯域となると、これは主観の問題であって、あるとないの基準が何かで決まる話。20kHz以上があると言えばあるし、ないと言えばない。そもそも楽器の高音だって同じ事。20kHz以上があると言えばあるし、ないと言えばない。楽器の場合は倍音というけれど、倍音と歪の区別は不可能。倍音なのかもしれないし歪なのかもしれない。どんな名前で呼ぶかの違いしかないと思うけど。数字的には。

 

 レコードの場合も、楽器の倍音(歪み)、録音の時のマイクの歪、再生の時のカートリッジの歪を区別するのは不可能。CDであれば、有無を言わせず22kHz以上はないと言えるけど、レコードでは解釈の問題にしかならない。具体例をテストレコードで見ればこうなる。Lチャンに、5kHzから12kHzぐらいまでのホワイトノイズを入れた時。Rチャンはクロストーク

 倍音の10kHzから24kHzぐらいと、三倍の15kHzから36kHzぐらいとが出てる。少なくとも、FFTでは確認できる。一般的にアナログの世界では、こんなレベルは測れないので「ない」、という事になってる。でもあると言えばある訳で、完璧に消えるCDと比べるならば、あるとしか言えない。なので定義とか解釈の問題としか言えない。

 

 これをカートリッジの歪と言うのか倍音というのかも解釈次第。楽器が倍音ならばカートリッジだってそうなのでは、という話はありでしょう。低い周波数だと特性は良くなる。これだと、三倍の所はナシと言っても差し支えなさそう。クロストークも悪くない。まぁ解釈次第ではあるけれど。あるかないかは自己責任でどうぞ、という話。

 おそらく、良い環境のレコード再生ならばCDよりは良いのでないかなとは思う。ノイズ成分が暖色的な音にしてくれる。CDは寒色的になる傾向がある。まぁ、林檎とオレンジではないとしても、両者の比較は簡単ではない。まずは実物で確かめてみましょう、そうすれば無用な誤解も減りますよ、というのが当たり前の結論。

 

 高い方が、そういう定義で決まる類であるとして、低い方はと言えばこちらは少しばかり数字の世界になる。CDは記録という話であればほとんど低域に制限はない。標準的なテストCDだと、再生できるかは別として4Hzが最低周波数。こんなの必要ないよね、というのが感覚的な常識ではあるけれど、数字的には低い方に制限はない。FFT的にと言うべきかも。実際の楽器でも、ほとんど制限はない。16Hzのオルガンが最低というのは、数字的に間違っている。

 

 どこまで下があるかといえば、答えられない。それは演奏者の決める事であって楽器で決まる事ではないから。オルガンのような場合は楽器で決まると言えるけれど、打楽器であるとかピアノでも弦楽器でも、決めるのは演奏者。1Hzだって出る。出てしまうという方が適切かも。楽器から出た音を完全に復元するには、そこまで必要になる。FFTの意味を考えれば当たり前の話。感覚的には理解しづらいとしても。

 

 太鼓であってもトライアングルであっても一秒間に一回叩くならば、周期は一秒。それをFFT解析すると、一秒の整数倍の周波数(1Hz)が嫌でも出て来る。それらを全部取らないと同じ信号の復元は無理。数字的には当たり前の話。勿論、太鼓とトライアングルでは、最も大きな成分の周波数は違うけれど、トライアングルでも一秒の整数倍の周波数が出る。なので、1Hzから必要。

 

 そんな低周波は耳では聞こえないけれど、体では感じている。本当にちゃんと低音が出るシステムで、低域を20Hzで切る場合と切らない場合とを比べると、切らない方が間違いなく良い。切ってしまうと、臨場感とか生き生きとした感じが消える。トライアングルならば同じかもだけど、太鼓ならば切ってはダメ。ちゃんとした低音は中々でないので、実地の確認は難しい。サブウーハーとかでは、全く話にならない。

 

 更にクリスタルボウルという楽器は、何にもしなくても平気で2.5Hzなんてのを出してくる。262Hzというのが勿論主成分であるけど。どんな構造なのかは謎としても、これの場合は、あるものはある。

  低い方を拡大すると、これ。2.34Hzの整数倍が延々と続く。

 これは2.34Hzの周期で叩いている訳ではないのだけれど、とにかくあるものはある。数字として否定はできない。録音するならば、再生は出来ないだろうとしてもDCまで必要でしょう。という訳で、解釈次第の高域は比較的に単純で、オーディオの闇と光明というのか解脱は低い方にこそある。この闇を通り抜けた先には、おそらくは光が。単純に、低音の事なのでスピーカーは部屋の一部と割り切って、部屋を建てて行けば答は待っているだろうという話。